
当代随一の実力派人気作家、東野圭吾の「マスカレードホテル」シリーズ第4弾をご紹介します。木村拓哉と長澤まさみ主演で映画化されている人気シリーズ。3月に文庫化されました。
物語 警視庁捜査一課の警部、新田浩介は20代の若者が何者かに刺殺された事件を担当。同僚からの捜査報告で、他の2件の殺人事件との共通点が浮かび上がる。殺害方法、そして凶器。被害者は3人とも正面から刃物で刺されており、凶器は捜査の結果、同じ砥石で研がれたナイフである可能性が高いという。3件の被害者たちにはさらに重要な共通点があった。3人ともかつて他人の命を奪っており、しかも年齢等の理由で重い刑には処されていないのだ。
彼等による被害者の遺族たちを重要参考人としてマークする新田ら捜査班。
そして、事態は新田にとって驚くべき展開を迎える。遺族らが次々に、「あのホテル」に入り始めたのだ。あのホテル――ホテル・コルテシア東京。過去2回の事件により警察とは浅からぬ因縁を持つこのホテルで、新田は3度目の潜入捜査を敢行する。第4の事件を未然に防ぐために…。
この著者の、「とにかく読む人を楽しませるということに主眼を置きながら、同時に読み応えのあるずっしりと重いテーマを物語自体に内包させ、それらが最適のバランスを保ちながら緊張感を持って先へ先へと進んでいき、最終的には会心の大団円へと着地する」という離れ業を実現させる手腕はもう職人芸というか名人芸ですね。
一つには、人物の描写が丁寧で的確。行動についても、内面も、細かなディテールをおろそかにしない。それぞれのセリフや行動に必然性があるから実在感が生まれ、物語が説得力をもって迫ってくる。
今回のテーマの一つは、現代日本での法による裁きの限界。当事者にとって限界と感じられるということなのですが、簡単には答えの出せない問題であり、実際、本書でも短絡的に答えのようなものが指し示されることはありません。ある登場人物に寄り添い、その心情に迫ることで、読者もともに考えていくことになります。そのように重いものを孕んでいながら、読後感の爽やかさはさすが。
今月下旬、第5弾「マスカレード・ライフ」が発売されます。いつもは文庫になってから読むんですが、今回は本書の最終局面からのつながりが気になり、すぐにでも読みたいです。(里)


