たつき諒著、飛鳥新社発行「私が見た未来 完全版」というコミックを4年前、本紙の書評欄で取り上げたことがあった。当時発行されたばかりで、書店員さんが話題の本として紹介してくれたのだ◆内容は著者が見た「正夢」を紹介したエッセイコミックで、最初は1999年に発行。その時点で「2011年3月に大災害」と表紙絵に書かれていたことから「東日本大震災を予言した」として話題になり、2021年に「完全版」として復刊された。その中に「2025年7月」に災害が起こる夢を見た記述があり、問題の時期が近づくに連れて注目は高まっていった。海外からの旅行客も激減し、コミックの影響力の大きさが示される事態となった◆日本人は昔から「虫の知らせ」的な感覚を大事にする。言うまでもなく「夢による地震予知」は科学的根拠とは無関係だが、何事によらずそれが備えを強化するきっかけとなり、実際に防災力として機能するならそれに越したことはない◆釈然としないのは「2025年7月5日」という日付が「大災害の起こる日」として一人歩きし、その日が過ぎた今「空騒ぎだった」という空気になっていること。著者が見たのはあくまでも「2025年7月」に災害が起こるという夢で日付は特定されておらず、「予言」として書かれたわけでもない。そのことは「7月5日」が来る前に著者が明言していたのだが、日付が予言されているというインパクトの方を人は好んだのだろう◆コミックは「不思議な話」として楽しみ、それはそれとして予言の実現性の有無などにかかわらず、常に備えを万全にする。安全のためにはそういうスタンスが求められることを肝に銘じたい。(里)


