今回紹介する1冊は連載開始から7年を経て完成したという加藤シゲアキさんの「ミアキス・シンフォニー」です。

 この本は愛とは何かをテーマにした連作短編集で、ぬいぐるみと話せる大学生や、生真面目な大学教員、複雑な思いを抱えた夫婦など、様々な事情をもった人物が登場します。各章によって物語の中心人物は別で全く繋がりがないように見えますが、それぞれがどこかで繋がりあって登場人物の運命に影響を与えていたりするので、タイトル通り交響曲(シンフォニー)のような物語です。

 この作品はさまざまな愛の形が描かれています。恋愛による愛だけではなく、家族愛や師弟愛など「愛とは何か」ということを物語の中で追い求めていきます。自分にとって愛とは何かを考えさせられる物語でもありました。私が特に印象に残ったのは料理人の大将が長年抱えてきた思いや後悔の念と向き合う物語「シンボル」です。自分の過去の過ちをなかったことにするのではなく、それと向き合うことで新たに人との繋がりや優しさに気づき、前向きに進んでいく再生の物語です。大きな展開や劇的なハッピーエンドを迎えるわけではありませんが、読後は温かい気持ちになりました。愛とは何かをテーマにしたこの作品の中でも1番印象に残る「愛」を感じました。

 表紙は画家のヒグチユウコさんが手掛けており、タイトルにもなった犬や猫の祖先といわれている「ミアキス」が描かれています。読み終えた後に改めて表紙を見ると、小説の世界を表現していて物語の雰囲気ともぴったりだと感じました。(彩)