6月9日、近畿地方も梅雨入りした。平年より3日遅く、昨年よりは8日早いという。早速、今週は連日の雨が予想されている。しとしとと穏やかな雨なら風情も感じさせてくれるのだが、ゲリラ豪雨のような乱暴な雨ではそうもいかない◆国語の授業で習った雨の詩が2編ある。小学校の時には「あめはひとりじゃうたえない きっとだれかといっしょだよ」で始まる鶴見正夫の「あめのうた」。「やねでとんとんやねのうた つちでぴちぴちつちのうた かわでつんつんかわのうた はなでしとしとはなのうた」と、擬音語・擬態語が子供心に面白く感じられた。中学校の時には三好達治の「大阿蘇」。「雨は蕭々と降っている 馬は草を食べている」の繰り返しが印象的で、朗読させられると誰かがきっと「雨は草を食べている」と言い間違えた。文豪夏目漱石にも「三四郎」で主人公の若者三四郎が思いを寄せる美しい美禰子と一緒に大木の下で雨宿りする場面など、雨が効果的に使われている作品が多い。穏やかな雨は文学と相性がいいようだ◆近世以前の梅雨の呼び名は五月雨。俳聖・松尾芭蕉の「五月雨をあつめて早し最上川」が梅雨を詠んだ最も有名な俳句かもしれない。降り注ぐ大量の雨をことごとく受け止めて下流へ下っていく、日本三大急流の一つ最上川が目に浮かぶ。与謝蕪村には「五月雨や大河を前に家二軒」の句があり、こちらは災害につながりかねない雨の不穏な一面を読む者に感じさせる◆他の季節の始まりと違い、気象庁がわざわざ「梅雨入り」の日を決める背景には、豪雨災害への備えを促す意味があるという。雨の風情を楽しむ余裕を持ちつつも、自然には別の面があることを忘れてはならない。(里)


