
舞台、ドラマ、映画等で活躍、近年はキャスターを務め新たな一面を見せる脚本家三谷幸喜の30代の頃のエッセイ集をご紹介します。
内容 あるプロデューサーが、著者の劇団のメンバー梶原善を「いいねえ彼、いつか使いたいね」とほめた。善に電話して「〇〇さんがほめてたよ」と伝えたが、相手が冷静なのでつい「本当だよ、秋の改編の新ドラマで使うつもりじゃないかな」。秋が来て善から「ドラマの話、どうなったのかな。家族も楽しみにしてるんだけど」。青くなり、プロデューサーに「梶原善を使ってもらえませんか」と頼んだが、以前と同じ口調で「いいねえ梶原善、いつか使いたいね」。以来、善から大嘘つきのレッテルを張られる。(「約束」)
締切に追われて執筆に励む夜、「佐久間を呼んでくれ」と間違い電話が。「どちらへおかけですか」といっても「間違い電話ですよ」といっても、「いいから佐久間を呼べ」の一点張り。こちらの番号をいうと「全然違うじゃねえか。佐久間いるわけねえじゃねえか。早く言えよ」。そして電話は切れた。やり場のない怒りに襲われ、思わず書きかけの原稿を破り捨ててしまった。 (「逆鱗」)
今まで観た大河3作も映画も面白く、ある意味ストーリー以上に「笑い」への情熱を感じました。本書は「振り返れば奴がいる」で初めて連ドラを手がけた頃の著書ですが、面白いのなんの。1編1編が短編のような味わいで、主人公(著者)が気弱さとサービス精神から騒動を引き起こすのを楽しめます。内容もさることながら書きぶりが達者で、著者の笑いに関する職人気質をつくづく感じる一冊でした。(里)


