「東大を目指す教育熱心な世間の親たちに、度が過ぎると、子どもがグレて私のような罪を犯すと示したかった」「駅で事件を起こせば電車が止まり、世間に大きな影響を与えられると思った」。東京の東大前駅で男子大学生を包丁で切りつけ、現行犯逮捕された43歳の男の供述だ。
あまりに身勝手で短絡的な動機、理不尽極まりない犯行にあきれるばかりだが、今度は千葉で道を歩いていた84歳の女性が刃物を持った男に襲われ亡くなった。容疑者は中学3年生。何が理由なのか、面識のない被害者の背中を複数カ所刺し、強い殺意があったとみられるという。
これら通り魔的犯罪の容疑者はまるでそれをいいたかったかのように、異口同音に「誰でもよかった」という言葉を口にする。しかしなぜか、小さな小学生の列に車で突っ込んだり、自分より体力で劣る女性や高齢者を標的にする。
先日、日高地方のまちで、2日続けて子猫の無残な死骸が見つかった。人の手による虐待の可能性も否定できず、もしそうであるなら、その残虐さ、小さな命を奪う行為は、全国的に相次ぐ殺人事件と同じ社会への怒りや不満を抱えた者の叫びなのかもしれない。
自分自身にも、家族や周囲の人にも、さらに社会に対しても敵意を抱き、他人を巻き込む騒ぎを起こして死のうとする行為を拡大自殺というらしいが、世界一安全な国といわれた日本はいつのまにか、かくも息苦しく、生きづらくなった。
巨大地震の津波と同じく、あらためて、子どもたちは何か危険を察知したらすぐさま逃げる瞬発力、女性や高齢者も闘う腕力、身を守る備えを再認識したい。(静)