スマートフォンやタブレット、モバイルバッテリーなど、身の回りの便利な製品に使われているのがリチウムイオン電池。小型・軽量で充電が可能といった特徴があり、普段あたりまえのように使っているが、実はこの電池の発明は人類史において極めて重要な意味を持つとされる。もし存在していなければ、スマホやパソコンは今のように小型化されず、電気自動車の航続距離も短く、ドローンも生まれなかったかもしれない。今後さらに用途が広がるとされる電池だが、近年はその廃棄方法が問題視され、環境省は全国の自治体に回収体制の整備を要請するまでに至っている。
リチウムイオン電池は強い衝撃や圧力により発火する危険性があり、ごみ収集や資源回収の過程で使われるプレス機によって圧縮された際に火災が発生する恐れがある。環境省によると、2023年度にごみ処理施設や収集車などで発生したリチウムイオン電池由来の火災は8543件に上り、前年度の約2倍に増加した。さらに国立環境研究所の試算では、2021年度のごみ処理施設の火災被害額は少なくとも100億円に達したという。
火災の原因となる製品で最も多いのはモバイルバッテリーだ。筆者にとっても外出時の必需品であり、気が付けば6つほど所有している。適切な処分方法としては、機器から取り外し、ビニールテープなどで端子を絶縁したうえで、電器店などの「産廃排出協力店」に持ち込むのが一般的だ。このほか、自治体が回収ボックスを設置していたり、広域清掃センターへ直接持ち込む方法もある。身近で便利な道具だからこそ、その危険性も理解し、適切に手放す責任を忘れてはならない。(城)