
「地雷グリコ」は、推理作家・青崎有吾による長編小説で、2023年の刊行直後から大きな話題を呼び、4大ミステリランキングすべてで第1位を獲得。「第37回山本周五郎賞」をはじめ、現時点で8冠を達成している。
物語の主人公は、勝負事になると異様な強さを発揮する女子高生・射守矢真兎(いもりや・まと)。彼女がさまざまなゲームに巻き込まれ、持ち前の観察力と戦略的思考を武器に、相手と頭脳戦を繰り広げていく。最初に登場するのが、本のタイトルにもなっている「地雷グリコ」というゲームだ。一般的なジャンケンゲーム「グリコ」のルールをベースにしている。ジャンケンで勝った手によって進める階段の数が異なり、グーで勝つと3段、チョキまたはパーで勝つと6段進める。階段は全46段で、先に最上段にたどり着いた方が勝ちとなる。だが、この「地雷グリコ」はただの運試しではない。プレーヤーはあらかじめ階段に3カ所、地雷を仕掛けることができるのだ。相手がそのマスを踏めば、10段分後退する。一方で、自分が仕掛けた地雷をうっかり踏んでしまっても後退はしないが、相手にその位置を知られてしまうというスリリングなルール。真兎は大胆な発想と洞察で、上級プレーヤーとの勝負に挑んでいく。
どの勝負も、単純な頭の良さだけでは勝てない。相手の視点を想像し、時にあえて裏をかくような大胆さと柔軟さが必要だ。勝敗の行方が二転三転する展開もあり、読者も登場人物と同じ目線でゲームの謎解きに参加するような臨場感がある。知的なゲームや頭脳戦が好きな人、どんでん返しにワクワクする読書体験を求めている人におすすめ。(城)