
トランプ大統領が保護主義を強く打ち出し世界が混乱している。米国第一主義の象徴としての追加関税を実施したからだ。日本には過去に前例のない二十四%の関税が実施。その後も方針転換等が続き株価は乱高下、世界は大混乱に陥っている。このトランプ関税は世界各国のみならずオーストラリアの無人島・バード島にまで及んでいる。この島は無人島で、トランプはペンギンにまで関税を掛けたのかと揶揄されたのである。そんなトランプがなぜ誕生してしまったのか。その根源を探ろうというのが本書の狙いである。
本書の書き出しは、「ゴジラはなぜ、日本に戻ってくるのか?」、というところから始まっている。怪獣映画の「ゴジラ」に例えられたトランプの登場である。
トランプ現象の根源はアメリカ独立のときからすでに存在したと著者は記す。
アメリカ合衆国の成立は、一七七六年の独立の年である。しかし、アメリカ社会の根源を思想史的に紐解くとそれではなく、一六一九年まで遡ると著者は書いている。この年は、アメリカに最初にアフリカから奴隷がやってきた年である。そしてこの一六一九年までアメリカを遡り、見直すべきだだという市民運動が広まったことが、トランプ現象の原因であると述べている。その間に、アメリカ社会で形成された社会的分断は、白人と黒人という分断だけではなく、エリート及び一部の富裕層、そして大多数の一般市民の経済格差へと広まっていったという。その代表例が、ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ、ウオーレン・バフェットで、この三人の資産総額は、国民の下位五十%の合計資産と同額である。またこれら一部の富裕層は全体の十%の人々に過ぎないが、アメリカの全資産の七十%以上を所有している。このことはオバマ政権でさらに顕著になった。オバマ政権はアメリカ多文化主義の象徴のようにして登場したが、同政権の八年間で中産階級と最上層の格差はすさまじいばかりに拡大していった。これがトランプ政権誕生に繋がったという。バイデンもまた格差社会を生み出し、ネオリベラル化に係って、今日のアメリカ分裂と民主主義の危機を導いたのだと結論づける。よって、今のトランプ関税は、アメリカのなるべくしてなった結果かもしれない。
そして、これまでの常識が通じなくなっていると著者はいい、そのような事態を普通、「革命」と呼ぶといって本稿を閉じている。(秀)