田沼意次のルーツは御坊にあった=かつては賄賂政治家とされたが近年は評価が著しく上がり、今年のNHK大河「べらぼう」では渡辺謙が演じて話題の江戸後期の老中田沼意次(たぬま・おきつぐ)について、紀州藩出身の父が「御坊村の出」だったとする講談がCD化されている。
1979年4月15日、東京上野にあった講談専門の寄席「本牧亭」での「八代目一龍斎貞山襲名披露」の公演で、貞山の師匠に当たる五代目神田伯治(のちの六代目神田伯龍)が演じた「田沼龍助の出世」。龍助は意次の幼名で、この講談の中では意次の父意行について「紀州日高の郡御坊村の百姓」と述べられている。
一般的には意行は「紀州藩足軽の出身で、五代目藩主だった徳川吉宗に仕えて側近となり、八代将軍就任の際に江戸へ行き旗本となった」とされ、「御坊出身」としている資料はこの講談以外にはほぼみられない。
CDを購入した古い文化に造詣の深い木村洪平さん(60)=御坊市薗=は、「出世の度合をより強調するために講談の作者が、和歌山城下よりも、片田舎である御坊出身にしようと創作した可能性はありますね」と話している。