2018年に野生の桜の新種として認定されたクマノザクラ。名前は当時から聞いていたし、写真では見たことはあったが、先日初めてじかに見た。熊野川や古座川沿いを中心に紀伊半島南部に多く自生しているが、日高地方でも日高川町などで見ることができる。筆者は印南町西ノ地の切目神社東隣に地元住民が整備している熊野懐紙なぎのさと公園で観賞させてもらった。印南町民の筆者だが、こんな身近にクマノザクラが見られる場所があるとは恥ずかしながら知らず、ソメイヨシノとはまた違う美しい花を見られて心が癒やされた。

 公園を整備、管理している寺下鎮雄さんによると、桜に詳しい大学教授の話として、山桜は本来、ソメイヨシノよりも咲く時期が遅い品種だと聞いたという。山桜は当地方の山でもよく咲いているが、ソメイヨシノよりも早く咲くと認識しているし、実際今の時期も咲いている。本当に遅咲きの桜なら、山でいま満開に咲いているのは一体何の桜なの、と思ってしまう。温暖な気候の影響なのか、実は山桜とは別の新しい品種なのか、想像力が駆り立てられる。新緑の季節、あまり関心のなかった木々に目を向けてみるのも面白いかも。

 桜の王様といってもいいだろう、ソメイヨシノの開花が九州などで始まった。日高地方でももう少しすれば美しい姿が見られるだろう。スマホで下を向くことが多いが、この時期は美しい桜を見上げようではないか。寒かった冬が終わり、いよいよ春本番。進学、社会人と新しい環境での生活を始める1年生が動き出すとき。不安と期待が入り混じっているだろうが、うつむくのではなく、桜を見上げながら、上を向いて一歩を踏み出してほしい。(片)