県内の高校や支援学校で組織される高校図書館研究会の学校司書が、2023年11月から2024年10月までに出版された国内の小説を対象に、おすすめ本を紹介する「わかイチ本」を実施した。総務省の調査で、和歌山の読書率は全国43位と低迷。読書離れが進む中、県内の読書率向上を目指し、読書のきっかけにしてもらうのが狙いだ。
筆者も本紙「本のひだかや」を担当することがあり、小説を定期的に読んでいる。特に就寝前の読書が日課だが、読み始めるとすぐに眠くなり、なかなか読み進められないことも多い。逆に物語が盛り上がり、クライマックスが近づくと、続きが気になり夜更かしをしてしまうこともある。現実の世界から物語の中に引き込まれ、物語が終わるころには新たな気づきや感動を得ることができる。このような読書の楽しさは、たとえ短時間であっても毎日の生活に彩りを与えてくれる。
学生時代には本に夢中になることはなかったが、社会人になってから読むようになった。きっかけは東野圭吾の『秘密』。事故で亡くなった妻の魂が娘に宿るという物語で、衝撃的なラストに心を揺さぶられ、本の面白さを教えてくれた一冊だ。この一冊をきっかけに、次第に読書の楽しさに気づき、様々なジャンルの本に触れるようになった。
読書は、言葉から映像を思い浮かべることで想像力が育まれるとともに、登場人物の感情に共感したり、物語を追体験したりすることで視野が広がり、新たな視点を得ることもできる。最初の一冊との出会いが、その魅力を教えてくれる。わかイチ本の中から、誰かにとって読書の扉を開く一冊目が見つかることを願いたい。(城)