今回紹介する本は人気作家の短編小説集「あえのがたり」です。この本は能登半島地震の支援を目的として作家の加藤シゲアキさん、今村翔吾さん、小川哲さんが発起人となり、物語で被災地に寄り添おうと企画されたチャリティ小説です。

 タイトルの「あえのがたり」とは能登地方の伝統儀礼「あえのこと」にちなんで付けられたもので、「あえ=おもてなし」という意味からおもてなしの物語を届けようというコンセプトで作られました。本の発起人以外にも柚木麻子さんや朝井リョウさんなど豪華な作家が参加しており、個性豊かな1万字の物語を楽しむことができます。時代小説や大学生が主人公の現代小説、海外を舞台にした話など、さまざまなジャンルの短編の中で、特に印象に残ったのは加藤シゲアキさんの「そこをみあげる」です。短編集の中でこの話だけが能登半島地震をテーマにしています。自然災害によって人生が変わる恐ろしさに胸が苦しくなるような描写もありますが、最後は明るい光が見える前向きな話で復興への希望も感じられました。他の作品も短い物語の中にそれぞれの作家の個性が出ている話ばかりで、1つ1つ楽しんで読むことができました。短編としてではなく、長編作品としてもう少しじっくり読みたかったと物足りなく感じる部分もありましたが、その物足りなさも、著者の他の作品も読んでみようというきっかけになる、そんな1冊です。

 ちなみにこの本の表紙は能登地域の伝統工芸「輪島塗」をイメージした赤、黒、金色が混ざり合う美しいアート作品となっています。(彩)