冬から春へ、野山でも家々の庭でもさまざまな花が咲き始める季節。3月のテーマは「春の花」とします。

 「花ことば物語」(鈴木美智子著、保育社)

 著者は大阪を中心に活躍してきたパーソナリティ、タレント。季節ごとの花の花言葉と伝説を紹介した一冊。春の章では、なのはな、すずらん、パンジー、さくらそうなど20種類が登場します。

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 ドイツの国に伝わるお話です。

 病気で寝ているお母さんを慰めようと、少女リスベスは花を摘んでいました。すると、花の精が、彼女にさくらそうの花束を渡して言いました。「親孝行なむすめよ。私のお城においでなさい。この花を鍵穴にさしこむと、門が開きます」

 リスベスはお城に行き、体の弱いお母さんのために、花の精からお母さんの好きなものをいっぱいもらって帰りました。そして、心の溶け合う毎日を暮らしました。あたたかい気持ちを開く鍵だから、ドイツでは、さくらそうを「鍵の花」と呼んでいます。