1911年の初代開館から数えて114年の長い歴史を持つ帝国劇場が建て替えのため2月28日で閉館、5年間休館となる。最後の夜に、日本テレビが劇場からの中継で放映した「ミュージカル・デイ」を観賞した◆帝劇での上演作品に限らず、映画を含めミュージカルから生まれた名曲ベスト30を紹介。小学校で習った「ドレミの歌」や「エーデルワイス」、「オズの魔法使い」の「虹の彼方に」、ビールのCMでも知られる「コーラスライン」のフィナーレ曲「ONE」、「アニー」の「トゥモロー」、「アナと雪の女王」の「ありのままで(レット・イット・ゴー)」等、有名な曲が幾つもランクイン。日本人にミュージカルはなじまないと長年いわれてきたようだが、そこから生まれた歌の数々は多くの日本人の心を捉えてきた◆「エーデルワイス」をうたう映像の字幕で「誇り」という言葉が目に入った。単に花の愛らしさではなく、主人公達が小さな祖国オーストリアへの愛と誇りを小さな花に託してうたったのだと作品の背景に気づき、ハッとした◆1位は「レ・ミゼラブル」の「民衆の歌」。パリ五輪の際の本欄でも書いたが、劇中では1832年のフランス七月王政打破の場面で革命を志す若者たちによってうたわれる。その日の帝劇終演時にもうたわれたこの歌を、番組のラストでミュージカル俳優ら出演者全員がうたった。シンプルな力強いメロディー、圧倒的な歌声の重なりが聴く者の心を震わせる◆歌は心を表し、心を伝え、心を揺り動かす。80~90年代、東欧の民主化への革命的な動きにも歌が大きな力となったことを思い出しながら、現在の混沌とした世界に贈るかのような「民衆の歌」を聴いていた。(里)