骨をすべて取り除いて味付けしたウツボの切り身をパックで販売

 郷土料理であるウツボ料理のおいしさをもっと多くの人に知ってもらいたいと、印南町印南の旅館「地魚会席 九絵鍋 今又」の3代目、今井覚さん(39)がウツボの身のから揚げを商品化した。小骨をすべて取り除き、生の身に味付けと下ごしらえしており、各家庭で揚げるだけ。味はもちろん栄養価も高く、地元ならではの食の魅力の一つとして早くも評判となっている。

 今井さんは京都などで修行し、25歳で帰郷して母と一緒に今又を切り盛りしている。漁港の市場で競りに参加して自分で魚を仕入れるようになった10年ほど前から、ウツボのコース料理も店で提供するようになった。知名度が高いクエやイセエビなどが人気だが、かつては貴重なタンパク源としてよく食べられていたウツボの魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいと、家庭でも手軽に食べられるようから揚げを商品化した。

 新鮮なウツボの小骨をすべて取り除き、厚みのある切り身を酒、しょうゆ、ショウガ等で味付けし、片栗粉も付けた状態でパック詰めしている。開いて天日干ししたウツボはよく売られているが、切り身の販売は非常に珍しい。要冷蔵、消費期限3日で、みなべ町堺の「もとや魚店」で販売している。今月中旬から売り始め、毎日5パック(1パック650㌘入り、税込み2220円)ずつ卸しているが、今のところ消費期限内にすべて完売。家庭で揚げれば出来たてを食べられる手軽さとおいしさが口コミなどで広がり、評判になっている。

 小骨が多くて下処理に手間がかかるため家庭料理として広まっていないが、味も栄養価も申し分ない食材。今井さんは「から揚げは、『子どもが大ファンになった』『居酒屋で出したら客に好評だった』など、うれしい声をいただいています。本当においしい魚なので、日高や紀南の食の魅力の一つとして知名度を上げていく一助になりたい」と話している。