5つのグループごとに 「8050問題」 の事例について出された意見を発表する参加者

 御坊市は19日、市役所で認知症や知的障害者らの「権利擁護支援を考える会」を初めて開き、福祉、医療、金融、司法、郵政、行政など関係者32人が参加した。高齢の親が自立できない子どもを養う、いわゆる「8050問題」の具体的な事例について対応を検討。「当事者(本人や家族)の思いをくむ」を大切に、地域全体で財産管理や日常生活を支える体制を構築していくことの必要性を確認した。

 市では2021年に関係機関でつくる市権利擁護推進協議会を設立し、地域課題の検討や御坊版オリジナルノートの作成などを進めており、メンバーから「多職種が集まって具体的な事例を検討する機会を持ってはどうか」との声があり、今回の考える会を開いた。

 提示された事例は85歳女性Aさんと55歳の長男が暮らすケース。長男は知的障害があり、ひきこもり状態でアルコール依存。時間の経過とともにAさんのもの忘れやお金の管理などの問題が発生し、それらに対するAさんと長男それぞれの思い、地域の声など細かな条件も付与された。参加者は5グループに分かれて対応を話し合い、関係機関への相談紹介や福祉施設入所の検討、後見制度を活用した財産管理、地域の見守りの必要性などの意見が出された。

 市権利擁護推進協議会メンバーの崎山賢士さん(上富田町、特養老人ホーム愛の園施設長)はアドバイザーとして参加し、「正直、今回のような事例を解決することは難しいが、我々が関わり続けることが大切。当事者の思いをどう実現できるのか、できる範囲で考えていく。地域住民ともしっかり膝を交え、協力してもらう体制づくりが必要」と話した。参加者からは「多職種で協議し、それぞれの考え方が共有できてよかった」などの声が聞かれた。