生まれつき両腕がないが、両親の「溺れないように」との勧めで5歳から水泳を始めたことがきっかけで、2004年アテネから21年東京まで5大会連続でパラリンピック水泳に出場した中村智太郎さんが先日、みなべ町南部小学校で講演した。本格的に競技競泳に打ち込むようになったのは中学生になってから。両腕のない選手が競泳で活躍する姿をテレビで見て、どうすればあんなに泳げるかを考えながら実践し、「パラリンピックで頂点に立ちたい」との目標を持って取り組んだことがパラ五輪出場の原動力になったという。
両腕がないのは、走るのが速い人と遅い人がいるように、背が高い人も低い人もいるのと同じで、個人差であり、個人差=個性だと思ってほしいとの言葉が印象に残った。海外旅行が好きで海外にいると自分らしくいられるといい、理由は日本ではまだ指をさされることがあるが、海外では特別な目で見る人がほとんどいないから。それは海外では子どもが小さいころから親がきちんと説明していて、一個人として尊重できる社会が出来上がっているからという言葉に、一親としてはっとした。
バリアフリーについても、日本ではまだ多目的トイレが少ないことに加え、男子トイレや女子トイレの中に多目的トイレがある施設があるが、それだと介助のために妻が一緒に入れない。障害者用駐車スペースに健常者が置くのを防ぐために三角コーンを置いている場合があるが、利用するには車を降りてコーンをどかさなければならず、雨の日ならそれだけでずぶ濡れになる。今まで気にしていなかった自分が恥ずかしい。人の目線に立たなければバリアフリーは実現できない。 (片)