先日、御坊市民文化会館で日高高校の芸術鑑賞会が開かれ、能楽を堪能した。卒業生の寄付によって実現した鑑賞会で、生徒たちにとって日本の伝統文化に触れる機会となった。

 過去に取材で能を少し見たことはあったが、今回はじっくり見ることができた。演目は「土蜘蛛」で、病に伏せる源頼光のもとに現れたクモの化け物「土蜘蛛」を武者たちが退治する物語。土蜘蛛と武者が戦う場面では、両手から舞台いっぱいに広がるほどの白い糸を飛ばしたり、飛び跳ねて刀をよけるなど、思っていた以上に動きがあることに驚かされた。

 公演前に行われた能についての丁寧な説明も印象的だった。囃子(はやし)の並びについては、右から謡(うたい)、笛、小鼓、大鼓、太鼓となっているが、右から左にいくにつれ、音の出る位置が低くなっているとのことだ。また太鼓に使う皮は300年以上前のものだったり、「ヤ」「ハ」「ヨー」などの掛け声は演奏の強弱や遅速などを示していたり、公演した土蜘蛛についても謀反を起こした一族を土蜘蛛と表現しているなどと解説があった。日本の伝統文化のさまざまな仕来たりなどにはそれぞれきちんと意味があるので、面白い。これらの事前の説明のおかげで、公演中の謡の内容は聞き取れないことが多かったものの、物語を十分に楽しむことができた。

 最後に「デジタルのものはコピーできるが、能は100%アナログでコピーはできない」の言葉が印象的だった。日本の伝統芸能は単なる娯楽ではなく、文化や歴史を後世に伝える重要な役割を担っている。次世代にその価値を伝え、守り続けることが大切。今回の公演で強く感じた。(城)