
由良町中央公民館で2日、浄土真宗本願寺派・教恩寺(奈良県)の住職を務め、「歌う尼さん」として知られるやなせななさんのトーク&コンサートが行われ、自身が子宮体がんを経験したことを語り、命の大切さを来場者に伝えた。
やなせさんは29歳の時に子宮体がんを発症し、卵巣と子宮を摘出した。「出産できない体となり、女性であることを失ったような気がしました」と当時の心境を振り返った。周囲では友人たちの結婚が相次ぎ、子どもの写真を載せた年賀状が届き、寺の経営や音楽活動がうまくいかないこともあり、「自分はなぜ生きているのか」と深く悩むようになったという。
そんな時、友人に悩みを打ち明けると、「何を言っているの。人の命は振り子時計のように、ネジが止まるまで動き続けるもの。歌や病気に関係なく、生きることをやめてはいけない」と強く叱咤された。その言葉を胸に、自分の鼓動に耳を傾けると「ドクドクと懸命に動いている」のを感じ、「これは自分の意志で止めてはいけない」と思うようになった。
その後も講演活動を続ける中で、自分と同じような思いをした人や、それ以上に辛い経験をしている人に出会った。「誰もがそれぞれの苦しみを一人で抱えている。だからこそ支え合うことが大切。私たちは決して一人ぼっちではない」と力強く呼びかけた。
講演中には自らの経験を通じて得た思いを込めた歌をうたい、参加者に命の尊さを伝えた。