
県農業試験場(紀の川市)とJA紀州は合同で、ピーマンやトマトなどの果実に被害を与えるコナジラミ類やアザミウマ類に対し、天敵となる在来昆虫のタバコカスミカメを活用したハウス栽培の研究に取り組んでいる。先進地の高知県などでは効果的な害虫防除として普及し、減農薬の栽培にもつながっているという。
タバコカスミカメはカメムシの一種で、成虫は3~3・5㍉程度。体はきれいな薄緑で、温暖な気候の西日本などに多く生息する。雑食性で微小昆虫の捕食能力が高く、コナジラミ類やアザミウマ類の天敵として効果が期待される。
害虫のコナジラミ類の排せつ物は葉などを黒くするすす病の原因となり、アザミウマ類は果汁を食害するため果実に傷をつける。いずれも防除が困難な難防除害虫。これまでは農薬散布でこれらの害虫を駆除していたが、害虫自体が薬剤に対する抵抗を強め、化学農薬だけでは防除しきれず、農家は対応に苦慮しているという。
県農業試験場はJA紀州ピーマン部会などと連携し、2023度からタバコカスミカメを活用した対策を研究。これまでに県内にタバコカスミカメが生息していることを確認したほか、タバコカスミカメの収集方法としては植物のゴマ(ゴマ科)やクレオメ(フウチョウソウ科)に集まる習性を活用して捕獲できることも分かった。
ピーマンなどのハウス内にタバコカスミカメを放すと、害虫の発生が抑制されることも確認できており、今後はタバコカスミカメの安定的な収集方法や効果的なタバコカスミカメの放虫匹数などについて研究を進める。
県農業試験場主任研究員の岡本崇さん(47)は「天敵の力を栽培に活用し、安定的な生産につなげていきたい」と話している。