御坊市民文化会館で先日行われた2024年度第4回市民教養講座は講師が2人、89歳のITエバンジェリスト若宮正子さんと御坊市出身の税理士笹圭吾さん(44)。ITが共通項だ◆昭和10年生まれの若宮さんは、少女時代の疎開先の思い出から語った。「食べるものはお粥ぐらい、それも日毎に薄くなる」など戦時中の記憶を実感込めて語れる世代で、IT関連のことを専門に活動する人はそう多くないだろう。若宮さんは81歳でゲームアプリを開発、世界最高齢のプログラマーとして米国アップル社に招待され渡米。国連でスピーチも行った。「面白がりで勉強好きだから」と若宮さんは言われた。好奇心と知識欲が世界を広げる好例である。「面白がる」という心の姿勢は、どんな状況でも気持ちを前向きに、明るい方へ動かす◆笹さんは元国税調査官としての経験や知識を生かし、「お金」に関して個々人が必要とする情報を広く分かりやすく伝える活動を行っている。「お金の対価は『感謝』であり、いかに『ありがとう』を集められるか」と持論を展開。両親への感謝を独自の表現でつづった動画も紹介した◆2人の共通の意見は「老若男女問わず、ITを便利な道具として使いこなすことで楽しく快適な世界が開ける」。若宮さんは高齢者が新たな生きがいを見つけることについて「夕日のように堂々と光を放ちながら沈んでいく」と表現。「堂々と」にしびれた。年齢を言い訳にせず、やりたいことにまっすぐ、好奇心の赴くまま向き合ってきた人ならではの言葉だと思った◆筆者は笹さんと若宮さんの間の年齢だが、完全にアナログ人間でゲームすらろくにやったことがない。まずは「面白がる」ところから、未知の世界に入っていければいいのだが。(里)