問題は事件発生からの長い空白の時間と国民の意識の低さであるが、いまとなっては後者を上げるしかない。北朝鮮による拉致問題を考える国民の集いで家族会事務局次長を務める横田めぐみさんの弟、横田哲也さんらの話を聞き、あらためてその思いを強くした。

 横田さんは、拉致問題の実態を知ってほしいだけでなく、国民は国家の主権が侵害されていることに怒りを持つべきと強調されていた。意識の低さを象徴する事例として、自身が散髪屋で体験した出来事を紹介した。

 テレビを見ながら髪を切ってもらっていると、尖閣諸島で中国海警局の船と日本の海上保安庁の巡視船がつばぜり合いをしているニュースが流れた。店員は「ちっちゃな島のことでごちゃごちゃもめごとが起きて、戦争が起こったりしたらいやだよね。あんな島、中国にあげちゃえばいいのに」と笑っていたという。

 横田さんは「もし自分の家に強盗が入り、わが子を連れ去ろうとしたらどうか。もちろん、誰もが武器を手に立ち向かうはず」とし、自分と関係のない遠くの島はあげちまえという自己矛盾を指摘。こんな大人がいるから、さまざまな主権にかかわる問題が解決しないんだと語気を強めた。

 それは国民だけでなく、政治家にもメディアにもいえる。過去には信じられないほど北朝鮮寄りの発言をした外務官僚がいて、政治も報道も相手に忖度してきたことが問題の解決を阻んできた。

 家族会は、トランプ大統領や新政権幹部、有力議員に直接会う準備を進めている。外交交渉は強力な力を背景にしなければ、自国の利を得られない。相手が独裁者であればなおさら。さらわれた同胞を救うため、国家、国民の覚悟が問われる局面である。(静)