「キャリー」などホラー小説で知られるスティーヴン・キングであるが、本書の前半は彼の半生が綴られている。

 二歳のとき、父が煙草を買いに出かけたきり行方不明となった。以後、兄とS・キングを母がスーパーで働きながら育てた。S・キングが小学二年のとき短編を四つ書いた。これを母が読み、一篇につき25セントで買ってくれた。これが彼の最初の原稿料である。
 高校時代、校内誌とは別に、裏・校内誌を作って発行する。これは教師たちを風刺した内容だったため大評判を呼んだ。しかし停学処分を受ける。ところが校長は彼の文才を認め地元スポーツ誌を紹介した。彼はここで編集長からプロの文章作法を教わることになる。これが後の作家生活に役立ったと述べている。

 大学卒業後、シーツ洗いをしながら学生結婚した妻とトレーラーハウスで暮らし始める。家の洗面所の机にタイプライターを置いて、彼は小説を書き始めた。書き始めて三枚目、気に入らないのでゴミ箱に捨てた。掃除をしていた妻がその原稿を見つけ、読み始めると面白い。妻は彼に続きを書くように勧めた。それが彼のデビュー作となった「キャリー」だった。

 これは出版社に四百万円で売れた。その二年後、「キャリー」はペーパーバックとなり三億五千万円で売れたのだった。

 彼は云っている。

 「ものを書くのは、金を稼ぐためでも、有名になるためでも、もてるためでもない。ひと言でいうなら、読者の人生を豊かにし、書くものの人生を豊かにするものだ。命の水だ」と。(秀)