墓じまいに続き、年賀状じまいが増えている。忙しい年の瀬の負担を少しでも減らしませんかというのが動機だろうが、今年いただいた賀状を見ながら、「本年をもちまして…」の多さにさみしさも感じる。

 年賀状のほかにも、日本では暑中見舞い、寒中見舞いなど、季節ごとに自分の近況を知らせ、相手の様子を尋ねる挨拶状がある。どれも手紙ほどの重みではないが、もらった側はそのちょっとした気持ちがうれしい。いずれ姿を消すかもしれない年賀状も、1000年前の「光る君へ」の時代に生まれたSNSだったのだろう。

 人気アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、軍の殺人兵器として感情を持たずに育った少女が戦後、文字の読み書きができない人の手紙を代筆する仕事に就き、人が人を思う愛情に接し、少しずつ人間らしさが芽生えていく。

 このアニメほどのインパクトはなくとも、記者もいろんな人に話を聞くなか、思いがけず心震えることがある。伝える相手は違えど、日々、読者一人ひとりに手紙を書くように、人の心を大切に、反省しながら記事を書いていきたい。

 今年は政治とカネの問題で与党が大きく議席を減らし、県内の景色も以前とは変わった。また、地方の首長選挙の報道を通じ、オールドメディアと呼ばれる新聞、テレビの体質が議論となった。

 煩わしさを廃し、便利でストレスのない社会に見えて、思いやりを美徳とする日本人の多くが生きづらさを抱え、自ら命を絶つ人もいる。いま、言葉の持つ力を信じたい。

 この1年のご愛読に感謝申し上げ、日高新報が新聞じまいされぬよう、新年も人の生きる力に寄与する紙面づくりに努めることをお約束し、納刊と致します。(静)