
私は4年前、御坊市立図書館でこの絵本に出会いました。3匹の子ねずみ達が書かれた表紙がとても可愛らしく手にとりました。それ以来、一番好きな絵本となっています。
子ねずみ達が住んでいる雑木林の向こうにガラクタ置き場があり、その角に小さなガラクタが五つ転がっていました。「鍵」「金ボタン」「電球の口金」「ボルト」「ガラスのかけら」達です。それぞれ、自分の昔話を始めます。
「鍵」は宝石箱の「鍵」でしたが、新しい宝石箱が現れたせいで捨てられました。「金ボタン」は王様のコートのボタンでしたが、ある日、糸が切れはじき飛ばされてしまいました。「電球の口金」は、家族団らんのテーブルを照らす灯。「ボルト」は人や物を運ぶ電車のボルト。四つのガラクタ達は皆、輝いていたのですが、今は忘れられ捨てられているのです。
最後に「ガラスのかけら」の番になりましたが、ガラスはガラス職人がコップを作ろうとした時に落ちた「ガラスのしずく」だったので、輝いていた時が無く何も話せませんでした。
そんなボタン達の元に、ある日、3匹の子ねずみがやってきた事で、状況が大きく変わります。ボタン達を見つけた好奇心旺盛な子ねずみ達は、それぞれに合った新しい役割を見つけます。「金ボタン」は「王様の冠だ」と言って自分の頭に乗せました。「鍵」は「魔法使いの鍵だ」と言って、お母さんねずみが焼くクッキーが美味しくなるように魔法をかけました。「ボルト」は食堂のイスに、「電球の口金」は帽子かけに、と、それぞれが子ねずみ一家の大切な「たからもの」に生まれ変わりました。そして、綺麗に磨いてもらった「ガラスのかけら」は、クリスマスの主役であるクリスマスツリーの一番上に飾られました。キラキラと光を放つ「ガラスのかけら」は、それはそれは美しく「星」となったその光で周りを明るく照らしたのです。物語の途中、ガラス達が満天に煌めく星を仰ぎ見ているとても美しいシーンがあります。昔、星は旅人の道標でした。その光で行く先(希望)を照らしてくれたのです。ガラス達は星に願う事で心優しい子ねずみ達と出会い、今の自分にあった輝きを手にし、「たからもの」へと生まれ変わったのです。
物語もイラストも、ホッとする優しさで心が癒やされ、忘れかけている「希望」を思い出させてくれるので、クリスマスだけでなく、疲れた時、落ち込んだ時に読むのもお勧めです。 (菫)