
少年達が活躍するクリスマスの物語を紹介します。
物語 時は1930年代、クリスマス休暇を目前にしたドイツの寄宿学校。生徒たちは、休暇前の最後の日に全校生徒の前で披露するオリジナル劇「飛ぶ教室」の稽古に余念がない。その最中、さんざんなぐられたらしい通学生が飛び込んできた。彼は帽子を床にたたきつけて叫ぶ。「何が起こったか、知ってるのか?」高等中学校と伝統的にいがみ合っている実業学校の生徒たちが、高等中学校生の一人を捕虜にして連れていき、みんなの書き取り帳も奪ったのだという。無断外出は厳禁されているが、そんなこと言っている場合じゃない、敵地に乗り込んで捕虜を救い出さなければ!
クリスマス前のわずか4日間の物語ですが、登場する少年達にとってはとても劇的な4日間。敵対する学校との戦闘、臆病な少年が勇気を示すため敢行するある事件、彼らの心から尊敬する2人の大人の劇的な再会と、実にいろいろなことが起こります。 特筆すべきは、本書がナチスドイツ台頭の直前、1933年に書かれていること。著者はこう言っています。「賢さをともなわぬ勇気は野蛮であり、勇気をともなわぬ賢さなどなんの役にも立たない。世界の歴史には、おろかな連中が勇気を持ち、賢い人々が臆病だった時代がいくらもある」
作中で厳しい先生が生徒たちに罰として書き取りさせる「悪いことをした場合には、やった者ばかりでなく、とめなかった者にも責任がある」という言葉は、時代を考えると一層重みをもって迫ってきます。
友情、正義、勇気と、今も人の心をとらえる色あせないテーマが、この中には息づいています。 (里)