御坊市藤田町藤井の総合進学塾、英数スタディーで講師を務める林晋作さん(50)=御坊市野口=が2つの文学賞で入賞。岐阜県教育文化財団主催の「清流の国ぎふショートショート文芸賞」では上位3番目の優秀賞、第51回明石文芸祭小説部門では5位に当たる実行委員会賞を受けた。
原稿用紙3枚以内にまとめるショートショート文芸賞は岐阜出身の直木賞作家、米澤穂信氏が特別審査員。849編の応募があり、林さんは「カナコー」という作品で優秀賞に選ばれた。北国の過疎地に一人暮らす老婆が、幼い頃から親しんだつららを表す「カナコー」という方言が自分と共に消えるのを惜しみ、裏庭で保護した美しい鳥に伝える。老婆亡きあと、長男は山々で響くウグイスの声に混じって「カナコー」という声を聞く。米澤氏は「表現力だけで読者を唸らせようとするのはいばらの道だが、『カナコー』は優れていた」と評価した。作品は同文芸賞ホームページで公開されている。
明石文芸祭は前回に続く実行委員会賞で、作品は昭和歌謡をテーマとした「天城の女(ひと)」。熱海のスナックでうたっていた30代半ばの男がプロの作詞家に「演歌歌手にしたい」と声をかけられるが実現せず、もらうはずだった「天城の女」とよく似た曲が世間でヒット。機会を逃しても変わらずスナックでマイクを握り続ける。
林さんは「方言に関心があり、つららを意味する方言に『かなごおり』など金属製の氷を表す言葉が多いのを見て『カナコー』という架空の方言をつくりました。ショートショートは初めてだったのですが、『黒牢城』の米澤さんに評価していただきうれしく思います。『天城の女』は私の好きな昭和歌謡『天城越え』からイメージ。賞をもらえてほっとしました。今後もさまざまな賞に挑戦していきます」と話している。
また、東京創元社主催の第2回創元ミステリ短編賞では時代小説「巴屋の猫」が、応募作品496編の中で48編の1次選考通過作品に入った。審査員は大倉崇裕、北村薫、辻堂ゆめのの3氏。