左から村岡助教、馬場講師、原教授、井上教授の4人が会見

 和歌山市の県立医科大学は25日、腫瘍内でがん細胞が分泌する乳酸が、抗体をつくる免疫細胞に悪影響を及ぼしていることを解明したと発表した。この乳酸に対しては、未認可の薬剤EPAC(イーパック)阻害剤が免疫細胞への影響を抑制することも突き止めた。将来的にがん治療への活用が期待されている。

 分子遺伝学講座の井上德光教授と馬場崇講師、泌尿器学講座の原勲教授と村岡聡助教の4人が同大学で会見した。

 がん細胞は、ブドウ糖を分解してつくられた乳酸を細胞外に分泌している。
 乳酸と免疫細胞との関係については、リンパ球など免疫細胞の多いマウス(ネズミ)の脾臓(ひぞう)から培養した細胞に乳酸を加えた実験を行い、免疫細胞のB細胞などに悪い作用を与えていることを明らかにした。乳酸からの免疫細胞への影響を抑える阻害剤に関しては数種類を試したところ、EPAC阻害剤が効果があることを突き止めた。
 同大学はこれまで膀胱がんと腎臓がんに関して研究。乳酸を多く発生させる膀胱がんで特にEPAC阻害剤の効果がみられたことから、泌尿器系腫瘍の有効な治療法になる可能性があるという。今後は他の種類のがんに対しての効果も調べる。さらに乳酸は免疫抑制に関わるタンパク質を促進させることも明らかにした。

 今後は、がん細胞が発生させる乳酸が免疫細胞に対する作用の全容解明を進める。