今回紹介するのは今村昌弘の「でぃすぺる」。大ヒット作「屍人荘の殺人」でデビューを果たした同氏。「屍人荘の殺人」はすべて面白く、今回は同シリーズではないが気になったので手にとってみた。
【ストーリー】小学6年生の3人組が地方の町・奥郷町に伝わる「七不思議」を調査する物語。主人公でオカルト好きのユースケ、転校生のミナ、そして前年に何者かに殺されたいとこのマリ姉の真相が「七不思議」にあると考える優等生のサツキの3人で、掲示係として新聞づくりのために調査に乗り出す。七不思議には「首あり地蔵」「自殺ダム」「永遠の命研究所」など、不気味で興味をそそる伝説が含まれており、これらが物語の鍵となる。
すぐにオカルトと結びつけようとするユースケ、現実的な視点を持つサツキ、冷静な分析役のミナがそれぞれの場所を訪ねたり、時には誰かの力を借りたりしながら物語は進んでいく。調査を進めていくうちに七不思議に隠された意味に気付いていく3人。そして町全体に影響を及ぼしている謎の組織の存在にもたどり着き、3人に脅迫めいた文章も届く――。
オカルトとミステリーが交錯している同作だが、主人公が小学生というところが面白い。行動は主に自転車なので遠出することはできず、また門限もあり優等生のさつきは家庭教師などでさらに時間が制限される。スマホもWi―Fiのみで外ではネットが使えず、今の時代の小学生らしさがある。昔と変わらないのは、子どもはオカルト好きということ。小学生のころに学校の七不思議に夢中になったことを思い出しながら楽しめた。主人公は小学生だが、内容は本格的なのでおすすめの一冊だ。(城)