国内では先月に衆院選、米国では今月大統領選が行われ、「政治」への関心があらためて高まっています。今月のテーマは「政治」とします。
「民王 シベリアの陰謀」(池井戸潤著、角川文庫)
総理大臣と息子が主人公。コメディーでありながら著者の現代社会のある風潮への思いも盛り込まれ、読み応え十分です。
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「日本て、前からこんな国だっけか」
「日本だけが変わったんじゃないと思う。世界中が、急速な勢いで変わってきてるんじゃない?」
そういったのは、紗英であった。前方のデモ隊に視線を向けた横顔はどこか戦場に向かう凛々しさのようなものを湛えている。
「なんで、この人たちが、そんな陰謀論を信じてしまうのか。私たちが目を背けることなく踏み込まなきゃいけないと思う。逃げていても、ますます分断が深まるだけだよ」
「眉村先生のおっしゃる通りだと思います」
貝原は決然といった。
「いまこそ、政治を語るときなんです」