旧美山育ちの筆者は、小さいころから川の幸ではモクズガニ(ズンゴ)やアユ、ウナギなど、いまでいうジビエならイノシシやシカなどの肉を普通に食べて育った。ズンゴは甲羅を開いた中に詰まった味噌が美味で、特大のオスの爪にはたっぷりの身が詰まっていて食べ応えも十分。ニオイのせいで敬遠する人もいるが、慣れ親しんだ味とニオイは全く気にならない。また、シカ肉ならいまはそんな食べ方をしないが、背身の部分を刺し身にして、ゴマ油と塩を付けて食べたのを思い出す。
先日、御坊市観光協会が取り組んでいる日高川の恵みフルコースの試食会に取材を兼ねて参加した。アユ、ウナギ、ズンゴなど筆者にとってはほぼいつも食べている食材で珍しさはないが、こうやってコースで出していただくと、素朴でありながら上品かつ自然の恵みが堪能できる料理として十分、都会の人にも通用するのではないかと思った。特にアユの造りは珍しく、真妻わさびとの相性はよかったし、筆者はビール党で日本酒が苦手な方だが、アマゴの骨酒も香ばしくおいしかった。市の地域おこし協力隊員の大阪の実家が手掛けるクラフトビールもあり、テナガエビやズンゴを使ったパスタなどの別メニューも考案すれば、また新たな客層をターゲットにできるかもしれない。
今回、会場となった瀬戸家住宅は国登録有形文化財で、所有者は観光の事業に有効活用することに前向きだというのはありがたいこと。新しい物を生み出していく観光もいいかもしれないが、いまある地域資源をブラッシュアップして発信できれば、大きな武器となるはず。地域住民や関係者の知恵や一層の奮起に期待したい。(吉)