首都圏で多発しているいわゆる「闇バイト」の事件に関して、送検される容疑者のニュース映像を見て首をかしげた。一部の数人、たまたまなのかもしれないが、とてもそんな凶悪事件を犯すような人間には見えなかった。
たんに自分が年をとっただけなのか、それとも世の中のトレンドが変わっているのか。日々の取材や個人的な日常でも、最近の中高生はみんなかわいく、真面目な子が多いと感じる。
小中高、どのまちのどの学校にお邪魔しても、子どもたちは笑顔であいさつをしてくれる。とくにスポーツで活躍している子は礼儀正しく、しっかりと自分の目標や考え、課題について答えてくれる。
ようは人当たりがよく、初対面であっても感じがいいという話。しかし一方で、心のどこかでストレスを感じてはいないだろうか。最近の中高生の天真爛漫は、一つ間違えば誹謗・中傷を受けるSNS社会の平均的な成長なのかもしれない。
「われ、誰にメンチ切ってんねん」。いまの子には漫画かドラマのセリフにしか思えないだろうが、自分が中学生のころはまちでこんな言葉を吹っかけられた。いまや絶滅危惧Ⅰ類のヤンキーは先生や親にも言葉使いが荒く、先生や親も負けてはいなかった。
スマホもなかった時代、相手の目つきや物腰で危険を察知する能力が自然と養われた。聞こえは悪いが、人の言動を疑い、奇妙な笑顔ややさしさの裏を読むある種の猜疑心も、必要な生きる力だろう。
ホワイトな高額案件あります――。そんな怪しい誘い文句に騙される若者が後を絶たない。みんな感じのいい子なのだろうが、便利な情報社会に生まれ育ちながら、危険を見抜くことができない。(静)