本作は、児童文芸を多く手がける著者の名作。31年前に発表され、その年の日本児童文学者協会新人賞などを受賞し、世界10カ国以上で翻訳され、映画や舞台にもなりました。
あらすじ 「あそこのおじいさん、もうすぐ死ぬかもしれない…」。小学生の僕ら3人のうち1人がそんな大人の会話を耳にした。自分はまだ身近な人の死を体験したことがないから、どうしても人が死ぬ瞬間を見たくなり、この夏休み、3人でごみ屋敷のような家で1人暮らしのそのおじいさんを「観察」することにした。おじいさんははじめ怒ってばかりだったけど、どこか僕らが来るのを楽しみにしているようで、おじいさんはだんだん元気になっていく…。
人は肉体の死と同時に意識もなくなるのか、あるいは意識は残り、新たな命とともに生まれ変わるのか。目に見えない存在や現象に関して、頭では理解できても信じられないことを自分の目で見て確かめたい。抑えられない欲求からの真面目な観察ははからずもおじいさんの心を動かし、新たな人との交流を通して、彼らは人が生きることを学んでいきます。
人は年をとるほど思い出が増え、その思い出は宿主が死んだあとも空気を漂い、雨に溶け、土にしみて生き続けていく。そうしてまた誰かの心に入りこみ、転生するのかも。
先日、あるテレビ番組の生まれ変わりに関する衝撃的な映像を見て、ずっと前に読んだこの小説をもう一度読みたくなりました。ほんの少しだけ、死ぬことが怖くなくなった気がします。
(静)