
県内のツキノワグマ目撃情報が急増、過去10年間で最多となっていることが分かった。養蜂箱や農業施設などの被害があるほか、人里で目撃される事例があり、今後、人的被害の発生を懸念する声も出ている。県は先月から奈良、三重県と合同で紀伊半島のクマの調査に乗り出しており、まずは個体数を把握して対策を練っていく。
全国的にもクマ目撃のニュースが相次いでおり、一般的には山での食糧不足、耕作放棄地の増加などに伴う生息域の拡大が要因と考えられている。
和歌山県内では2023年度のツキノワグマ目撃情報が48件だったが、今年度は4月から9月末までの半年間ですでに倍以上の115件。市町村別では田辺市が21件(うち龍神村が14件)で最も多く、次いで新宮市18件、日高川町16件。ほか日高地方では日高町が4件あり、今年5月には高家の民家近くでも目撃された。
ツキノワグマは人命にかかわる場合など、警察の判断で猟友会のハンターが撃つことが可能だが、環境省レッドリスト2020で絶滅危惧Ⅱ類となっており、紀伊半島では全体の生息数が少ないと考えられていることから、1994年から狩猟が禁止されている。他の都道府県では管理鳥獣に指定して捕獲が可能な自治体もある。
紀伊半島3県合同のクマの個体数調査は今年度と来年度の2カ年、業者に委託して定点カメラを設置して実施。今年度は9月から今月末まで行っており、その後データ解析して個体数を推計する。
クマ対策については今月7日、田辺市で開かれた知事と市町村長との懇談会の中でも首長から捕獲できないかという話が出ており、県は「まず個体数を把握して、一定数が確認されれば管理計画を作って対処することも可能」との見解を示している。
県自然環境課のホームページではクマから身を守るための注意事項や目撃情報件数をまとめ啓発している。