日高地方では秋祭りがたけなわだ。10月2日の印南祭から始まり、5日の御坊祭へと続き、13日にも各地で笛や太鼓の祭り囃子が聞こえた。きょう20日も土生祭(日高川町)、吉原祭(美浜町)、鹿島祭(みなべ町)などが行われる。地元の住民にとっては地域に伝わる民俗文化に触れる絶好の機会。ぜひ、神社まで足を運んで見学してはいかがだろうか。
筆者は高校を卒業して生まれ育ったまちを離れたこともあり、それほど地域の祭りには関わってこなかった。幼い頃の思い出といえば、祭りの日は学校が午後から休みになり、屋台や獅子舞の勇壮な姿に心を踊らせたことを鮮明に覚えている。露店でたこ焼きを買って食べ、おもちゃ屋で買った銀玉鉄砲で友だち同士で撃ち合いして楽しんだ思い出もある。参道沿いには酔いつぶれて寝ている人もいたし、祭りが終わって自宅に帰っても親戚らがにぎやかに酒をくみ交わしていた。まさに地域を挙げた一大イベントだった。
ところが、最近では少子化が影響し始めている。四つ太鼓や屋台などの担ぎ手不足の地域も発生しつつあり、他地域の若者に依頼して参加してもらうこともあるそうだ。祭りの風習も消えつつある。かつてはほとんどの家でサバ寿司を手作りし、親戚や近所などに配った。しかし、今はそんな風習もほとんどなくなった。全国的にも過去から引き継いできた出し物の奉納が途切れ、将来的に祭り自体を継承することが難しくなっているという。
少子化の加速や時代の流れで地域の祭り文化が薄れつつある。継承する対策が必要だ。今の子どもたちが大人になったとき、「昔の祭りはにぎやかだった」と振り返らなければよいのだが…。(雄)