1994年秋、美浜町の煙樹ケ浜で行われたNHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」のロケで、地元のエキストラの皆さんと記念写真に収まる西田さん(前列中央)、後列左から3人目が柳本さん(柳本さん提供)

 「釣りバカ日誌」などの映画やテレビ、舞台でコミカルな役から骨太の人物まで自在に演じ、幅広く活躍した俳優の西田敏行(にしだ・としゆき)さんが東京都内の自宅で死去したことが17日、分かった。76歳だった。1995年放送のNHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」では主人公徳川吉宗を演じ、美浜町の煙樹ケ浜で行われたロケにも参加。突然の訃報に、日高地方でも驚きと悲しみの声が聞かれた。

 西田さんは福島県出身。明治大中退後に入団した劇団青年座で1970年に初舞台を踏み、その後、テレビや映画に進出した。ドラマ「西遊記」の猪八戒や「池中玄太80㌔」シリーズの主人公・玄太などのユーモラスな演技で人気を集めた。
 88年に始まった映画「釣りバカ日誌」シリーズでは、底抜けに明るい釣り好き社員「ハマちゃん」役を演じて国民的に愛され、22年間続く長期シリーズになった。

 その他の出演作に映画「植村直己物語」「敦煌」、NHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」「葵~徳川三代~」など。

 歌手としても「もしもピアノが弾けたなら」を大ヒットさせ、NHK紅白歌合戦にも出場した。2008年に紫綬褒章、18年に旭日小綬章を受章。
 NHK大河「八代将軍吉宗」では放送前年の1994年秋、美浜町煙樹ケ浜で2日間かけて撮影が行われ、西田さんも参加。当時から大ファンで家臣役のエキストラにも参加した美浜町文化財保護審議会委員の柳本文弥さん(68)=日高町=は「会話はできませんでしたが、一緒に記念撮影してもらいました。かっぷくがよくて、立派な殿様という印象でした」と振り返り、「釣りバカ日誌からファンになり、最近では『ドクターX』やテレビ番組『人生の楽園』のナレーションが大好きでした」。当時、町職員だった籔内美和子町長は撮影の裏方として弁当配りやゴミ拾いなどに参加したといい、「訃報に煙樹ケ浜でのことをすぐに思い出しました。役に入り込んでいる印象があります。ご冥福をお祈りします」と偲んだ。

 由良町で行われた釣りバカ日誌のロケ時には、御坊市の旅路旅館に宿泊。中町の旧きのくに信金御坊営業部裏の「やよい寿し」でよく食事していたという。北塩屋地内、天田橋南詰めで当時営業していた「うどん・そば純平」(現在は音楽スタジオ「ヒール」)にも立ち寄った。店主だった前田彰さんは約18年前に他界したが、妻の圭子さんは当時の話を聞いており、「私はたまたま外出していて会えませんでしたが、スタッフの方と一緒にふらっと入って来てくれて、テレビの雰囲気とまったく一緒の気さくな人だったと言っていました。サインにも気軽に応じてくれて、店にずっと飾っていました」と懐かしんだ。

 ロケが行われた由良町戸津井のつるしま旅館(現在はつるしま丸)の戸田稔さん(84)は、「本家の2階の窓際で撮影していたことを覚えています。テレビで見る通りの穏やかな方でした。いろいろなお話もさせてもらいました」と当時を振り返った。ロケにエキストラで参加した由良町役場職員の岡﨑誠一さん(60)は「一緒に肩を組んで写真を撮ってもらったことはいい思い出です。とても気さくな人だったことを覚えています」と話している。