〝信じた仕事から逃げ出したくなって、道からずり落ちてしまうことがあるのかもしれない―〟。作中に出てくる言葉に、何故かわかりませんが響くものがありました。世の中にあまたとあふれる仕事。最近は若者の起業も増え、まるで仕事とは、自分の人生を思い通りに描く手段です!と言わんばかり。ですが、それは空虚なおとぎ話に過ぎないのかと。辛くても、生きるために仕事はしないといけないわけで。
物語は、大学を出てから14年間続けたソーシャルワーカーの仕事を辞めた主人公が、職安で紹介された仕事を転々とする話。1年間で5つの仕事を渡り歩きます。それがなんともニッチな仕事で、①小説家の見張り②バスのアナウンス原稿の作成③おかきの包装の裏に記載する豆知識文の作成④路地を訪ねてポスターを貼る⑤森林公園の見回りとマップ作り。こんな仕事って普通職安で紹介されへんやろ!と思わずツッコミたくなるようなものばかり。主人公は、先輩の同僚たちとそれとなく関係を築き、一見上手くやっていくように見えますが、辞めるときは「もういいかな」と結構あっさり。仕事に対する思い入れは、主人公にとって曖昧で、あくまで割り切った姿勢でやるものだ、というドライな感じが何とも今時。
でも結局、そういう姿勢が正解なのかなとも思うのです。ふと逃げ出したくなったとき、思い入れが足かせになる場合もあるから。タイトルとは裏腹、仕事はそんな思い詰めないで、もっと気楽にやっていいよと、そっと語りかけてくれたような気がしました。 (鞘)