ロシアがウクライナへの侵攻を始めて、もうすぐ2年と8カ月。海外メディアによると、2年半で両国兵士の死者数はざっと100万人を超え、ウクライナでは1万数千人の市民が犠牲となった。
一方、イスラエルによるガザ地区への攻撃では、昨年10月の戦闘から10カ月が過ぎた時点でパレスチナ人の犠牲が4万人を超えた。この数字だけでも、イスラエルの攻撃がいかに苛烈であるかが分かろう。
ユダヤ人は先の大戦時、ナチスドイツにより600万人が殺害された。その際、ドイツ人実業家のオスカー・シンドラーは約1200人のユダヤ人を救い、リトアニア駐在の外交官杉原千畝はユダヤ人に約6000人分のビザを出した。
領事館に押し寄せたユダヤ人は、米国等へ逃れるため日本の通過ビザが必要だと訴え、杉原氏は本国の判断を仰ぐが、回答は「否」。ドイツとの同盟締結を前にした斟酌だったが、杉原氏はこれに背いて命のビザを発給した。
この行動に、イスラエル政府は戦後、杉原氏を正義の人として表彰、杉原氏の家族が功績を伝えてきた。しかし、今般のイスラエルのガザ過剰攻撃によって、杉原氏に批判の矛先が向いているという。
「イスラエルはホロコースト以上に残忍な行為をしている」「日本人として、(ユダヤ人を救った)杉原千畝の判断を残念に思う」。NHKが特番で紹介したネットの声だが、なぜこうも短絡的なのか。同じ日本人として理解できない。
いま、イスラエルは国際社会で孤立を深めている。同国を支える米国の二重規範が見透かされ、その米国の同盟国日本はASEAN諸国から存在意義が問われている。この総選挙、国家のために力を発揮する人を選びたい。 (静)