石破内閣が発足し、法務大臣には新しく埼玉県選出の牧原秀樹氏が就任した。会見で死刑制度に対する考えを問われ、「凶悪犯罪が後を絶たないことを考えると、死刑もやむを得ない」。執行の判断は「慎重、真摯に考えたい」と述べた。

 先日、58年前に静岡で起きた一家4人殺害事件の再審=やり直し裁判で、88歳の袴田巌さんに無罪が言い渡された。強盗殺人などの罪で起訴され、事件発生から14年後に最高裁で死刑が確定。そこから44年もの時間を費やしての再審判決だった。

 今回、最大の争点だったみそタンク内で見つかったとされる血のついた衣類などは、裁判長が「捜査機関により捏造された」とし、「非人道的な取り調べによる自白は任意性に疑いがある」と指摘。袴田さんを犯人とは認められないと判断、無罪を言い渡した。
 事件が凶悪であるほど、警察、検察は何がなんでも犯人を捕まえ、起訴、有罪を勝ち取らねばならない。今回は検察、弁護側の双方が確信を持って臨んだ結果、被告人が罪を犯したとするに十分な証拠はないという判断(無罪)だった。

 刑事裁判の被告人を有罪とするには目撃証言、自白、指紋のついた凶器などの直接証拠が重要となり、状況証拠ばかりでもそれを積み上げ、「誰がみても常識的にこの人しか考えられない」ケースであれば有罪となることもある。

 現在、収監されている死刑囚は全国で107人おり、うち約6割が再審を請求しているという。中には、決定的な物証がないまま、無数の状況証拠を根拠に死刑が確定したケースも。死刑判決が出るような事件で冤罪が許されないのはいうまでもないが、再審請求している間は刑が執行されないわけでもない。大臣の決断は極めて重い。(静)