~生放送特番の出演者が、本番四十分前になってもまだ来ていない。連絡も取れない。それが今私に襲いかかっているトラブルだった。~
 こういう書き出しで始まる小説。主人公はテレビ局の人気バラエティーを取り仕切るプロデューサーだ。

 テレビはネット上のSNSや各種配信番組等に押されて今や娯楽の王道から陥落した感があるがテレビを見ない家庭は存在しないだろう。そんなテレビ番組の裏側が垣間見れる作品である。

 舞台は、東京のあるテレビ局。地上波全国二十八局ネット、ゴールデンタイムの生放送特番『人狼をさがせ』の本番直前である。出演者は、人気お笑い芸人、アイドル、歌手、タレント、グラビア女優、大物俳優等である。この番組は、それぞれが芸能界のゴシップを持ち寄りその最高のゴシップを披露した出演者に賞金がでるという番組である。ただし、その中に一人だけ嘘のゴシップが含まれる。それが誰か(人狼と呼ばれる)を当てるという番組だ。しかし、直前になっても大物俳優がやってこないのだ。プロデューサーが右往左往するなか、スタジオの隅に奇妙な段ボール箱が置かれていることにプロデューサーが気付いた。その箱の中を覗いてみると、中には大物俳優が死んでいたのである。警察へ連絡するか番組を継続するのか、プロデュサーは苦悶する。時間がない。出した結論は、番組を続けることであった。ただし、番組内容は変更。大物俳優は死んでいた、というドッキリ番組としたのである。

 バラエティ番組制作の裏側がよく分かる内容である。小説を読んでいると、まるでテレビを見ているようだ……。    (秀)