ちょっと外にいるだけで汗だくになる厳しい残暑も、秋分の日に降った雨を境に徐々に和らいでいるようで、朝晩はだいぶ過ごしやすくなってきた。天高く馬肥ゆる秋、すがすがしい季節においしいものを食べて、夏場に奪われた体力を回復させたいものである。

 そんな中、今年8月にはうれしいニュースが飛び込んできた。秋の味覚のサンマが北海道根室の漁港で大量だというのである。水揚げ量は昨年の140倍、価格は200分の1という大量、安値と聞いた。ところが、スーパーに行って価格をみても1匹200円や300円で、見た目も普通サイズ。御坊のような地方にはその年のトレンドがたいてい遅れてやってくるので、もう少し待てば値も落ち着くかと思っていたが、そうでもない。とりあえず初物をいただこうと買ってみたが、やはり脂の乗りは全然ダメ。
 今年が豊漁だったように見えた要因は、出漁の日程変更にあったそうだ。例年は小型船、中型船、大型船で解禁日をずらしていたが、今年は一斉に8月10日解禁。大型船も出漁して大量に水揚げしたため、初物がまとまった量になっただけ。実際は来遊が少なく、体重は昨年を下回るとの見通しもある。根本的な要因は海水温の上昇や外国漁船の影響など。

 サンマと言えば代表的な青魚で、DHAやEPAをたくさん含み、脳細胞の活性化や老化防止、動脈硬化予防など健康に役立つ栄養素がたっぷり。個人的にはハラワタも好きで、プリン体が多いので食べ過ぎには注意だが、庶民の味から遠ざかっている近年の価格では用心する必要もあるまい。十数年前、丸々と太ったサンマ1匹が80円で売っていた頃が懐かしい。 (吉)