つい先日、米国テネシー州の川に架かる橋で、ミュージックビデオの撮影をしていたロックの大御所ジョン・ボン・ジョヴィ(62)が、橋の柵の外から飛び降りそうな女性を見つけ、話しかけて救出するというホットなニュースがありました。ロックのスーパースターが女性を救い、ハグをする姿はすごくかっこいいシーンですが、同じシチュエーションでも場所が日本海の越前岬となれば、北島三郎をイメージしてしまいます。

 ブラックでちょっとエロいミステリーといえばこの人。オカルトと男女のヒトコワなど計10編をまとめた短編集です。今回はその中から、福井県の「自殺の名所」ともいわれる東尋坊で出会った行きずりの男女の危険な物語「越前みやげ」を紹介します。

 あらすじ 趣味の絵を描くため、1人で福井県の越前岬へ出かけた男。バランスを崩せば海へ真っ逆さまの断崖の岩場で、よろよろとした足取りの自殺志願者にしか見えない女を見つける。よく見れば、ついさっき飛行機で一緒だった女だ。「もしかして、飛び降りるのか…」。強い風雨のなか、男は怪しまれぬよう慎重に近寄って声をかけ、女を安全な場所へ誘導することに成功する。聞けば泊まる宿も予約していないらしく、その影のある表情と口調、あまりの危うさに男は趣味の話で女の気持ちを和ませ、一緒に食事をして駅前の陶芸品の店を訪ねる。女はそこで大きな壺、男は小さな壺を土産に買って帰るが、女の壺はちょっと大きすぎる気がした。

 2人で東京へ帰り、男は女をマンションへ送り届ける。そんな出来事も忘れたころ、男はテレビのニュースを見て凍りつく…。      (静)