全国ニュースでも連日伝えられている兵庫県知事のパワハラ問題。先月30日に行われた百条委員会の証人尋問では、知事が深夜にもかかわらず職員にチャットを送り、業務の指示をしていたことが明るみとなった。緊急性の低い内容も多々あり、これには委員らも「異常だ」と非難している。
最近、「つながらない権利」が注目されている。業務時間外に仕事のメールや電話が来た場合、その応答を拒否できるというもので、欧米諸国で法制化も進んでいるという。
今は携帯電話やLINEなど、思いついたらすぐに連絡できるツールが発達しすぎている。それでいつしか「四六時中、対応できるのが当たり前」の風潮が出来上がってしまった。業務時間内ならスムーズに仕事が進んで便利だが、業務時間外に連絡が入ると休んだ気になれず、精神的負荷が一気にかかる。つながらない権利は、そのようなストレスの積み重ねが労働者の心身の健康を害するという考えから、言われるようになった。
法制化されている各国の現状を調べてみると、フランスはつながらない権利について労働協約を締結することを義務付けている。ポルトガルでは企業が業務時間外の従業員に連絡することを禁止しており、連絡した場合は罰金が科せられる。オーストラリアでも「連絡遮断権」の法律が制定され、規則を破った雇用主には罰金がある。
アジアでも法制化の動きがあるが、日本は検討を始めたばかりの段階。業務時間外の仕事の連絡は、おそらく全国どの会社でも行われていること。兵庫県知事の問題を機に、つながらない権利の認識が一気に広がり、労働者が気持ちよく仕事ができる環境になってほしいと願うばかり。(鞘)