串本町で小型ロケット「カイロス」の打ち上げを目指すスペースワン株式会社の豊田正和代表取締役社長が25日会見し、今年12月中に2号機を打ち上げる計画を明らかにした。カイロス初号機は今年3月、発射後すぐに自律飛行安全システムが稼働して爆発したが、ロケットの性能などに問題はなく、このシステムを見直すことで安全かつ確実に打ち上げできると判断した。

 スペースワンは串本町の小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」を整備し、1カ所の発射場では世界最高頻度となる年20回の打ち上げ、2030年代には年30回を目標にしており、民主導の宇宙産業発展とともに「宇宙宅配便」の実現を目指している。

 カイロスの打ち上げは当初、2021年度中を予定していたが、コロナや世界情勢の影響で部品がそろわず延期。今年3月9日には発射のカウントダウンまでしていたが、警戒海域に船舶が入ったため、急きょ延期。13日の打ち上げではリフトオフから5・3秒後に自律飛行安全システムが稼働し、ロケットが自ら飛行中断措置を取って爆発した。

 スペースワンは同システムが稼働した原因について、事前に推進薬のサンプルを取って行う燃焼速度の計測プロセスで、推力が高めに出ると予測しており、実際にはその予測より推力が低く、速度が不足していたためだと説明。同システムの使用は国内初ということで、飛行正常範囲を厳しく設定していたとした。ロケットの性能や仕組み自体に問題はなく、推進薬の計測プロセスを改善し、システムの飛行正常範囲の設定を見直せば次の打ち上げが可能と判断した。

 詳細な打ち上げ時期は10月中に発表。2号機には民間企業の衛星5基を搭載し、目標の軌道投入を目指す。県は前回と同様、チケット制の見学会を予定している。豊田社長は会社設立からわずか6年での打ち上げは世界を凌駕するスピード感であることを強調し、「打ち上げの経験は次への挑戦の糧。全身全霊をかけて2号機のミッション達成に臨む」と話した。