TBS系テレビドラマ「ブラックペアン シーズン2」の原作の一つ、前回の「ブレイズメス1990」に続き完結編「スリジエセンター1991」をご紹介します。こちらの方がメインです。

 物語 病院長の佐伯に招聘され、モナコのモンテカルロからやってきた美貌の天才外科医・天城雪彦は、部下の世良とともに心臓外科手術を専門に行う「スリジエ・ハートセンター」の設立を目指している。資金を捻出すべく、大企業ウエスギ・モーターズ会長の公開手術をもくろむが、佐伯院長の急進的な病院大改革を危惧する勢力によって次々にトラブルが起こり始める。

 ウエスギ・モーターズ会長の手術は会長自身の意向で断られ、最終的には東城大学と古くから因縁のある患者が公開手術に臨む。

 天城と、佐伯院長に内心で反旗を翻す高階の両方の忠実な部下である世良は、手術現場となる東京には行けず、桜宮市から手術の成功を祈ることになる。そして公開手術当日。患者に対峙した天城は「過去の亡霊」と遭遇する…。

 前作は華麗なる天才外科医・天城の読者へのお披露目のようなもので、物語の眼目はこちらにあります。往年の話題作「白い巨塔」ほどのボリュームはありませんが、私には本書の方が遥かに、読後感がよかった。

 敵対する天城と高階が「ベッドの上の患者を無事に帰すためなら何でもやる」という、共通する信条のもとで握手を交わす場面など、深い部分で読む人の共感を呼ぶ倫理観が貫かれていることもあるかもしれません。

 医療のプロとしての誇りが垣間見える名場面でした。 (里)