御坊市は旧御坊町内で小規模多機能型居宅介護事業所の整備を推進しているが、ここ数年、手を挙げる民間事業所が見つからない状況が続いている。高齢者らが自宅で自立した生活ができるよう支援する施設で、採算や業務負担の面で整備が敬遠されているのが要因。市の事業者公募には申し込みがなく、担当者は頭を抱えている。 

 小規模多機能型居宅介護では利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、施設への通所や宿泊、自宅への24時間対応の訪問サービスなどを行っており、利用者にとって利便性が高い。また、高齢化の進展で現状の介護施設だけでは受け入れ人数が不足、在宅での高齢者支援のニーズが一層高まっている。

 一方、運営側にとっては主任ケアマネジャーの配置など、利用定員に応じた基準を満たす必要があり、採算面や業務負担を考えた場合、小規模多機能型居宅介護事業所のみを運営するのは難しく、老人ホームやグループホームなどを含め幅広い事業展開を行っている事業所が、居宅介護のサービスも併せて提供しているのが現状だ。

 市内では藤田地区にあがら花まる(2006年整備)、塩屋地区に日高博愛園しおや(17年整備)の2事業所があり、市は第7期介護保険事業計画(18~20年度)の中に、居宅介護事業所空白エリアの旧御坊町にも整備する目標を掲げた。この際、事業者を公募したが、申し込みはなし。その後、1事業所が手を挙げ、第8期介護保険事業計画(21~23年度)の期間中に整備される予定だったが、事業者側が撤退。市はあらためて第9期計画(24~26年度)に旧御坊町への整備を盛り込み、先月から今月16日まで事業者を公募したが、やはり応募はなかった。

 担当課は近く再公募する予定だが、見通しは暗く、「今後、事業者に個別に話をもちかけていきたい」としている。居宅介護事業所の整備には現行で国から施設整備補助金3660万円などが出るが、その後の運営補助はなく、市の独自補助も現状では難しいという。