由良町門前の臨済宗妙心寺派興国寺に、外国人としては2人目、女性としては初めてとなるフランス出身の僧侶風神(ふうじん)さん(63・本名=フォマルス アタレ)が勤めている。オーケストラのフルート奏者を経て、30歳から米国で仏門に入るなどの経歴を持ち、ことし4月から同寺の僧侶となった。
風神さんはフランス東部のストラスブールで生まれた。音楽好きな父母の影響で、12歳からフルートを始め、高校卒業後はオーケストラの一員となり奏者として活動。20代後半にニューヨークに渡り、フルート指導などをしている中、「人生の目的が音楽にない」と思うようになった。そんな時、子どもの頃にテレビで見た合気道を思い出し、ニューヨークの道場に通うようになり、そこで出会った選手に教えてもらった禅堂正法寺で禅を体験。「自分の探していた道は禅の中にある」と思い、30歳からキャッツキルマウンテン山中にある禅寺、大菩薩禅堂金剛寺で修行を始め、32歳で僧侶となり、同寺の嶋野栄道老師から、フルートをしていたことから「風神(ふうじん)」という名をもらった。36歳で来日し岐阜県の正眼寺で約2年、米国の金剛寺に戻って12年過ごし、2012年から再び正眼寺に戻った。その後は、正眼短期大学で僧侶を目指す学生への授業などを行っていたが、修行に集中したいと、正眼寺と同じ山川宗玄老師が住職を務める興国寺に来ることになった。
興国寺では午前2時半に起床し、3時から5時まで座禅、日中は寺の掃除や剪定などに励み、夜も30分座禅する。同寺について「大きく、歴史が深く、すばらしい禅堂があり、ここで生活できるのがとても幸せです」。由良町についても「人がみんなとても温かいです。今度、海も見に行ってみたい」と話し、「この大きなお寺に2人しかいないので、少しさみしいです。人と話すのが好きなので、皆さんお寺に来たときはぜひ声をかけてください」と笑顔を見せる。田中禪徹監院(76)は「近年増えている外国からの参拝者への対応などでとても助かっており、お経もとても上手です」と話している。