日本人のいい面でもあるが、昔から我慢することが美徳とされてきた。とにかく根性があれば何でも我慢できる、火でさえも涼しいという精神論であり、いまだ根強く残る。
先日、アルピニストの野口健さんが御坊市で災害復興支援の取り組みなどについて講演。「日本の被災者は我慢する。自分のほしいものを要求しない。私が何かできることがないのか考えていたら、ツイッター(現X)には本音が出ていた」と紹介した。野口氏はアメリカ・ボストン出身。父が外交官だったためニューヨーク、サウジアラビアで幼少時代を過ごしており、日本人の我慢や、本音を隠す姿は違和感を覚えたはず。だからこそツイッターでの本音に応えるよう、支援物資としてたばこを届けたところ、愛煙家の被災者から大変喜ばれたという。しかし、その行為がネットで「災害で大変な思いをしている人を肺炎で殺すのか」と批判があり、人生初の大炎上を経験したそうだ。
さらにたばことワインを被災者に届けたときも心の底から感謝されたとし、「極限状態にどうすれば心を癒やせるか。被災者にたばこやワインを贈るのは不謹慎だと言われるが、心身ともに極限状態だからこそ、少しの時間でも厳しい状況を忘れられるような支援が必要ではないか」と話していた。
近年、我慢やストレスが体調に与える深刻な影響が指摘されており、我慢をしない、または我慢をさせない環境づくりやフォローの仕方も重要。たばこの肺炎リスクと、被災地のストレスによる体調不良の危険性を一概に比較することはできない。ただ、可能な限り被災者の心に寄り添った支援が大切だと感じた。(吉)