先日、美浜町議会の議員研修会があり、県内の新型コロナ対応を指揮した元県福祉保健部技監の野㞍孝子さんが、「新型コロナとの連戦に思うこと」をテーマに講演。取材で話に聞き入った。県内では2020年2月に湯浅町の済生会有田病院で国内初の院内感染が発生。野㞍さんは当時の初期対応とともに、その後の全員入院や幅広い疫学調査といった「和歌山方式」と呼ばれる独自の対応を語った。記事にしきれなかった部分を含めて紹介したい。

 済生会有田病院では相次いで勤務医や患者の感染が確認され、野㞍さんは「発生してしまった。そう確信してPCR検査を行うよう指示しましたが、会議中で机の下でショートメッセージを打つ手は震えていました」。対策本部が立ち上がるまでに病院の院長代理に電話で連絡をとり、病院名や感染者が医師だと公表する同意を取ったという。

 当時の仁坂吉伸知事は会見で、病院関係者全員の検査をすると発言。事前に聞かされていなかったそうで驚いた。続くコロナとの闘いは新興感染症のため検査、調査、データ分析が重要と考え、積極的に情報提供。記者会見では県民を守るための正確な情報と個人のプライバシーとのバランスが難しく、感染者の情報をどこまで出すかで上司と意見が食い違ったこともあったと振り返った。

 高く評価され、ワシントン・ポスト紙の記事にもなった「和歌山方式」。野㞍さんは、これまでの歩みに共通するキーワードとして「真摯さ」「逃げない」「信念と決断」「柔軟」「人と人とのつながり」「伝える言葉の重さ」を挙げた。いずれも見習い、今後につなげられる言葉。貴重な話を聞けるとてもいい機会だった。(笑)